BEPPU STUDIO 02
本プロジェクトは別府市とNPO法人 BEPPU PROJECTさんが協働し、アーティスト・クリエイターの移住定住を促進する事業の一環として、多様な制作拠点づくりを目指し、空き家や空き空間を改修したレンタルスタジオを、3箇所開設するというものでした。弊社が携わったのは「BEPPU STUDIO 02」。戦前から残る元酒屋倉庫であり、現在は能の稽古場として使われている「べっぷかんこうかい」の一角を、複数のアーティストが使用できる共同アトリエ兼ギャラリーとして再生するという取り組みです。
1階中央のまちの通りから奥の庭へ繋がる半屋外のガレージは、白基調でエアコン付きの使いやすいアトリエへと生まれ変わらせました。この空間は奥に細長く、突き当たりが竣工当時からの庭で、本格的な能の稽古場と隣接しているという特別な空間の特質があり、ただ使いやすいだけでなく、空間の力を引き出すような工夫も凝らしました。細長い空間の、通りからの入り口から奥へ向かい、微かに雲母(きら)がかかりながら6階調に色調が徐々に変化し、また天井の照明やバトン桟木、カーテン(仕切りと壁保護用)など細部まで調整することで、光のグラデーションの変化や、遠近感 / 重力 / 視覚 / などのずれを体験者が無意識に感じるよう工夫しました。
また、多様なシーンでお使いいただける「可動建築」も設えております。新たに制作した「コの字モクカイ」はコンパクトに収納しながら、椅子/机/展示什器として活用でき、天井の吊り下げ用フックは、制作時の間仕切りや展示の際に利用可能、そしてエアコン用ビニールカーテンを開け放つと心地よい風と光が抜けていきます。制作や展示、催しなどにも使える空間です。ぜひ様々にご活用ください。
一方、スタジオ/ギャラリーは、機能性を重視し、別府には珍しいニュートラルなホワイトキューブとしています展示壁面はビスも使用でき、使用後の復旧も可能です。そして奥の使い勝手の良いシンクは、アーティストの芝田知明さんに手掛けていただき、日常の制作時や片付けの際にも場所が創造力に働きかけるような空間としました。
能舞台が生と死の境に浮かぶように、この場も「今ここ」と「別の世界」をつなぎ、文化が交錯しながら、時空を超えて創造が芽吹く間(あわい)のような場になることを祈っております。
DATA
所在地:大分県別府市秋葉町7-33 べっぷかんこうかい1階
主用途:アトリエ、ギャラリー
構造・規模:木造(部分内装改修)
改修面積:90.05㎡
延床面積:90.05㎡
竣工:2025年3月
写真: 久保貴史 / 今枝あき