HAJIMARI Beppu

HAJIMARI Beppu

別府の文化に出会う はじまりの場所

○プロジェクト概要

HAJIMARI Beppuは、大分県別府市千代町に位置する、築46年の酒類卸業倉庫建物を用途転換し再生した複合型の宿泊施設です。建物は1977年竣工の鉄筋コンクリート造4階建て。かつて「油屋商店」の商いの場としてまちの賑わいを支えてきたこの建物を、私たちDABURA.mが自社ビルとして購入し、耐震補強を経て新たな用途へと生まれ変わらせました。企画・設計・運営までを一貫して手がけているのが本プロジェクトの特徴です。

 

○まちと既存建物の再生に向けた視点

人口減少や都市構造の変化によって、中心市街地の空き家・空きビル化が全国的な課題となるなか、既存建物の新しい活用方法が問われています。HAJIMARI Beppuは、そうした都市の課題に対するひとつのアプローチです。

DABURA.mでは、まちと人の活動が新しく交差する「場」をつくるため、自分たちの新たな活動拠点を探す際にこの建物に縁あって出会い、再生に取り組みました。建物の持つ歴史や佇まいを丁寧に読み取りながら、「まちにひらかれた場所」を目指しました。

 

○コンセプトと空間構成

コンセプトは「別府の文化に出会う はじまりの場所」です。

かつての倉庫だった時代の素材や記憶を受け継ぎながら、いま必要とされる機能や空気感を重ねています。

宿泊施設としてだけでなく、設計事務所や地域交流の場も一体となる多層的な“まちの拠点”となるよう空間を構成しています。まちに積み重ねられてきた時間の層を大切にし、土地の文化と来訪者が出会うはじまりの場となること――それが本プロジェクトが目指すものです。

 

○空間ごとの設計と工夫

1階には、二層吹き抜けの「HAJIMARI LOUNGE」と「喫茶ゆあみ」、そしてガラス越しにまちとつながる陶芸工房+ショップ「うみとじかん」、さらにDABURA.mのオフィスを配置。

まちの人々から譲り受けた思い出の椅子や、器、本、そしてアートが混ざり合い、自然と人が集まる広場のような雰囲気を生み出しています。耐震補強のブレースは、あえて視線を妨げないメッシュ状の設計とし、アートや植栽の展示にも活用しています。

3・4階の客室は、もともとオーナーの住宅だった空間を活用し、長期滞在に対応するためキッチンや洗濯機、ワークデスクを備えました。

コンクリートの壁や天井はそのままに、針葉樹合板の風合いを活かした壁を新たな要素として加えて、住みながら作り上げていくアーティストのアトリエのような雰囲気にまとめています。さらに、各部屋には別府や大分を拠点とするアーティストが特別に制作したアート作品を設え、滞在しながら土地の文化にも自然とふれることができます。

設備面では、新たにエレベーターを設置し、車椅子の方も宿泊できるように配慮しました。外壁・屋上は防水や塗装を一新し、構造検証や劣化部分の補修も丁寧に行っています。給排水設備や空調などは一新し、消防設備は現行法に適合した新たなものとしています。これから数十年安心して使用することができるようにしました。

 

○企画・運営への取り組みと地域への開き方

HAJIMARI Beppuは、企画から設計・運営までをDABURA.mが一貫して手がける“実践の場”です。

宿泊サービスにとどまらず、NPO法人BEPPU PROJECTさんと協力したアートイベントや、ショップ運営、トークライブなど、さまざまなソフトプログラムを積極的に展開しています。

地域の人々も観光客も、ふと立ち寄りたくなる。そんな、まちの日常に溶け込む複合的な文化拠点を目指しています。

 

○これからの展望・設計事務所としてのメッセージ

私たちDABURA.mは、HAJIMARI Beppuを通して、既存建物の新たな可能性と、地域のつながりのかたちを模索してきました。

今後もこの場所を起点に、地域の資源を活かしたプロジェクトや、他地域への展開も視野に入れています。

「まちと人」「積層した時間と今の空間」が響き合うような新しい風景をこれからも提案しつづけたいと考えています。

 

DATA

主要用途:宿泊施設、弊社設計事務所、陶芸工房、ラウンジ、喫茶、ショップ
所在地:大分県別府市千代町
構造・規模:鉄筋コンクリート造4階建て
建物竣工:1977年7月
今回の耐震再生・用途転換竣工:2023年9月
企画・設計・運営:DABURA.m株式会社
延床面積:約815m²

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