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Cosmetics laboratory

工場建築を地域と環境に開く

 本施設は、ラッシュリフト用まつげ美容液の開発製造施設(工場)である。大分県佐伯市の麦畑地帯、蛇行する河川、集落道路、高速道路橋が交差する敷地に建つ。事業主は、働く人・地域の人・環境に優しく、人々に愛される製品作りをしていきたいという想いを持ち、地域と共に成長し、地域の誇りとなり、愛され、誰もが働きたくなる工場を目指して私達に設計を依頼した。敷地は事業主が幼少期を過ごしたエリアに有り、事業主が幼い頃、学校の帰り道にあった工場の職員さんとの交流の記憶が、その様な地域に根差した工場作りを思い立つきっかけとなっている。
 今回施設を設計するにあたり、単純な門型フレームの小さな変化の積み重ねによって柔らかい形を獲得し、機能的でありながらも抑揚のある特徴的な空間の実現を目指した。曲面屋根は各室の用途に適した天井の高さを緩やかに繋げており、平面的な湾曲は、隣接する麦畑と建物の間に余白を生み出している。工程を可視化したクリーンルームを中心に据えた機能的なレイアウトとし、内部動線は見学通路にもなるようにし、それらが外部からも見えるようにする事で、地域の人々が汚染や公害の不安を感じず、安心でき、親しみを感じて気軽に立ち寄れる工場となるよう検討した。快適な労働環境の実現にも注力し、自然光を取り入れた、周囲の麦畑の風景を望める事務室と開発・製造室とした。一般的に工場は暗い・閉鎖的・単調であるなど、地方都市での働く環境としてネガティブに捉えられることが多いが、この施設では若い世代でもポジティブに働きたいと思えるような空間づくりを目指した。実現した外観や空間体験は、地方の製造業で働くことへのイメージ転換に繋がり、実際に求人募集に対しては、若い女性をはじめとする18 名からの応募もあった。開所式では餅撒きも行われて多くの地域の人達が集まり、地域の新しい要素として受け入れられ、愛される工場建築となったと感じる。
 施工では地域の技術力向上を考慮し、地元の工務店や鉄工所を採用した。これまでにない曲面の建物に苦労したが、関係者が皆協力して取り組み、地域の潜在力を引き出せたことで、関わった人々にとっても思い入れのある場所となったと思う。本施設は製造だけでなく製品の活用施術などについて発信する場ともなる。製品の発送先は日本全国に渡り、製品だけでなく人的交流の場としてもこの場所が地域と全国を結ぶ拠点ともなっていくだろう。

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