GALLERIA MIDOBARU

HOTEL

GALLERIA MIDOBARU ―new local "site-specific" hotel architecture

A hotel like a museum of contemporary art has been completed on a hill in the Horita Onsen area of Beppu.

<立地環境と設計の手がかり>

 

 この建築が建つ場所は、別府市の南西部、「別府八湯」のひとつである温泉場「堀田温泉」エリアの断層崖の上の「御堂原(みどうばる)」地区である。別府といえば温泉で有名だが、その起源は地球の地殻・造山運動にある。
 九州島は、大分県別府市から長崎県島原市まで続く「別府 – 島原地溝帯」を境に今でも年に1センチメートルほどずつ離れていると言われており、地質学的時間の中で、大地に裂け目が生じてそこに活発な火山活動が起こり、山が生じ、その山からの土砂によって扇状地ができ、そこに染み込んだ地下水と地熱や様々な成分が出会って温泉の恵みが生まれるのである。それなので、別府市の南北には断層崖によるエッジがあり、この断層崖の地形の存在は別府の別府たる起源を想い起こさせてくれる存在なのである。 
 「堀田温泉」は歴史ある温泉場で、江戸時代に開かれて交通の要衝に発展した歴史的温泉場である。しかし現在それと感じられるような建築物等は無く、街にその独特の固有性を感じる要素は史跡碑等と地形で、近代から現代を経て固有の場所性を失いつつある側面もある。それを踏まえ、今回の宿泊施設の設計に当たっては、ホテルという定型化した形式の中での装飾論に陥らず、地域や環境との本質的な一体性や相互作用がある、地域の新たな固有性となってゆくような建築と空間体験を生み出したいと考えた。 そこで、別府の起源といえるこの場所の地形と向き合うところから設計をスタートした。

<フォーミングプロセス>
 この建築を考えるにあたり、下記の5つのプロセスを経ている。このようなプロセスを経て、この建築の全体像が生まれている。
1.別府の起源ともいえる断層地形 この場所の先天的な状況を認識 
2.  不均質な地形に、均質な連続する垂直面を重ねる 
3.地形と敷地の縁で垂直面を切り取り、大地に定着させる 
4. 大地と連続する物質性を与える  断層崖に連続する「削り出された大地」としての壁の群れの出現 
5. 壁の群れに孔を穿ち、分断された空間を繋げる 壁を切り取り、スラブを挿入し、機能をセットする 
6. 完成 壁と孔によるフレーミングから、環境や別府の景観とつながる
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<この建築の空間体験と地域での役割>
 この建築を訪れると、壁に穿たれた孔に突き刺さるロングキャノピーを目にし、それに誘われるように厚い壁を潜ると、一度感覚が日常から切り離され、水の音や、壁やスラブの孔から染み込んでくるような光を感じる。館内では、アートと出会い、孔を潜りながら客室やレストランへ至る路地のまちあるきのような空間体験をすることになる。随所で壁や孔によってフレーミングされ異化された風景と出会い、まちとつながる。この建築のプログラムは宿泊機能を中心としているが、宿泊者のみならず、堀田温泉エリアの新たなパブリック性のある拠点として、鶴見岳登山やアクティビティ参加の機会で一時的に来訪する旅行者、レストランやカフェ・バーを利用する近隣や地域の住民の来訪も想定されている。また、12組の現代美術作家による別府との邂逅から生まれたコミッションワークが館内に展示され、それらが今後少しずつ変化し増えてゆくギャラリーとしての機能もある為、美術鑑賞者も訪れるだろう。様々な来訪者が自由に過ごし交流できるよう、2層吹き抜けたロビー、半屋外のテラススペース、水盤テラス、屋外のテラススペース、カフェ・バー、スタジオが用意されている。それぞれのパブリックスペースは、壁の孔により途切れているようで繋がっている。

<本棟の建築について>
 建物は2棟からなり、ロビーなどのパブリックな機能と客室のある本棟と、レストラン棟で構成されている。本棟は新築であり、レストラン棟は既存の建築物を利用した再生建築となっている。
 本棟は、地上5階建ての規模が必要で、耐火建築物とする必要性から、RC造としている。先述した「断層崖に連続する『削り出された大地』としての壁の群れ」を生み出すにあたり、南洋材でできた合板型枠(コンパネ)を極力使用せず、新たな型枠を大分の林産業者と開発した。「まく板型枠」といわれるもので、大分県と林産業者が砂防ダムなどの土木工事用に開発していたものをベースとして開発した。主な型枠は大分県産の無垢スギ材でできており、寸法は外形650mm×1800mm、スギ板は幅100mm。表面はノコで切ったままの表情とし、板間や型枠間の隙間を設け、脱枠時に凹凸が残ったり残らなかったりという偶発性が現れるようにした。型枠は丈夫な為、3回~4回の転用ができた。この型枠の寸法や表情が、階高をはじめ空間全体を通底するリズムを成している。
 コンクリート自体にも効果を与えた。コンクリートに酸化鉄を主体とする無機混和材を顔料として加え、大地と連続する存在感を求めた。コンクリート表面に発生するエフロレッセンスや型枠の木材、転用に由来するムラなどもすべて制作プロセスで発生する現象、「景色」として受け入れて仕上げた。コンクリートは人工的な素材としてのイメージが強く、時に精緻な工業製品のような精度を求められるが、コンクリートには別の顔もあると感じている。大分県や近隣にはセメント産地も多く、九州では砂利や砂は近場のものが使われることが多く、みな元はナチュラルマテリアルであり、コンクリートのナチュラルな側面を引き出したいと考えた。心身を休めにくる場所には、精緻な人工物よりも、おおらかでざっくりとした、土塊のような表情のコンクリートがよいと考えた。

<レストラン棟の建築について>
 レストラン棟は既存建築物を再生活用した再生建築である。クライアントが土地を求めた際に、RC造3階建ての別荘が残存していた。この既存建築物の3階部分を減築し、上部重量軽減により耐震性を高めて、建築基準法より求められる負担を下げ、同一クライアントが運営する隣接施設からの眺望を良くした。既存部分に対しては、耐震診断と補強も実施している。その上で、鉄骨造により、本棟からくる壁のリズムを連続させる形で増築部分を設け、客室部分で新旧の空間の変調を感じられる空間構成とした。
 レストランは、石窯調理によるグリル系メニューが主体となっており、地域の食材の風味や特徴を活かした料理が主体となる。空間も料理のコンセプトと饗応するよう、厨房まわりは銅板、九州産牡蠣殻を原料とした藁スサ入り貝灰しっくいなどナチュラルな素材を用いて構成している。手に触れる木部はすべて九州産センダン材。ケヤキに似て、それよりもう少しやさしい質感で、「早生樹」として知られ、広葉樹なのにスギやヒノキと同程度の期間で出荷できる為、今後林業の主役のひとつになる可能性のある樹種である。

<この建築も持つ「繋がり」と意義>
 この建築は、壁や孔によるフレーミングを通して、実空間的に別府の街や風景と繋がっているが、それだけなく、型枠や木材など、「物の流れ」を通じて地域と繋がっている。その実現は、地域経済への効果、輸送エネルギーを縮減して外国の人々と資源を搾取しないというSDGs的な実践であると共に、地域で産した素材が地域の建築や空間を形作ることにより、そこでしか感じられない独特な場所の感覚を生み出し、近代 – 現代の均質化を乗り越えて新たな固有の景観を成す現代の建築と空間体験を創造するという私の課題であり挑戦であった。この建築がこれからどのように受け入れられ、場所が活かされてゆくのか、近くで見守り、クライアントと共に育てていきたいと思う。 
<architecturephoto>
https://architecturephoto.net/118763/
<ArchDaily>
https://www.archdaily.com/962568/galleria-midobaru-hotel-dabur-inc?ad_source=search&ad_medium=search_result_projects

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